「おひとり様」リスクを死後事務委任で解決する
不動産賃貸業に広がる「おひとり様リスク」と、死後事務委任の新たな役割

一人暮らしの高齢者が増えるなか、賃貸物件で亡くなるケースも年々多くなっています。令和6年には自宅で亡くなった一人暮らしの方は約7.6万人、そのうち約2.1万人は死後8日以上が経過。自宅死亡者の8割を65歳以上が占めており、高齢のおひとり様の賃貸入居の受け入れは、不動産賃貸業にとってのリスクにもなりえます。
こうした状況の中で、賃貸住宅の現場では「自宅での孤独死をどう回避するのか」「亡くなった後の手続きや退去を誰が担うのか」という根本的な問題が明確になってきています。これまでは家族が死亡届や退去整理を担うことが前提でしたが、家族関係や生活スタイルが変わる中で、この前提が成り立たないケースが確実に増えています。家族が遠方、そもそも家族がいない、連絡がつかない。こうした事例が積み重なるほど、不動産賃貸業にとってのおひとり様は“避けたい存在”ではなく、“適切な備えが必須のリスク”として扱うべき対象になりつつあります。
この流れを受けて、2025年10月の法務省通達で、死後事務受任者が見守りや安否確認を含む委任を受けている場合、「家屋管理人」として死亡届を提出できることが明確化されました。家族以外でも、契約に基づく第三者が死後の初動対応を担えるようになったという点で、賃貸業界にとって大きな前進です。孤独死発生時の初動、退去・原状回復の手配、家賃精算といった一連の対応が、死後事務委任契約や身元保証を活用することで明確な委任のもとで適正に進められる体制を整えることができます。
おひとり様の増加は社会全体の流れとして避けられませんが、身元保証や死後事務の仕組みを備えれば、そのリスクを“管理できるリスク”へ変換できます。高齢者の入居に慎重にならざるを得なかった状況から一歩進み、安心して受け入れ可能な環境を整えることが、不動産賃貸業にとってこれからの大きな強みとなります。
当協会と連携してできること
“貸せない”を“支援できる”に変える。入居から最期の対応までを一貫してサポート。
当協会との連携により、不動産賃貸業が抱える課題は大きく改善できます。
保証人がいない入居希望者の場合でも、当協会に登録・活動している身元保証相談士® が保証契約・緊急対応・死後事務・退去に向けた明け渡し調整までを包括的に支援するため、不動産側が抱える「もしもの時の不明確さ」が解消されます。
保証会社だけでは担えない“死後”の領域、行政手続き・遺品整理・鍵の受け渡し・公共料金の精算など、賃貸現場では扱いにくい部分まで協会が対応します。
これにより、管理会社・オーナーは「断らずに貸すための裏付け」を得られ、入居審査の幅が広がります。
また、協会の提供する契約書類・説明テンプレート・実務マニュアルはそのまま使用できるため、新しい仕組みを導入しても現場の負担が増えません。
当協会は全国150拠点に拡がるネットワークがあるため、地方の物件でも安定した支援を受けられます。
- なお、一部地域では対応が難しい場合がありますので、詳しくは事前にご相談ください。
“リスクだから断る”ではなく、“仕組みがあるから受け入れられる”。
そのための現実的な受け皿が、当協会との連携によって整います。
実現による不動産賃貸業の新たな展開
断らずに受け入れる。不動産の空室対策と社会的役割を両立させる賃貸経営へ。
当協会との連携は、不動産賃貸業の在り方そのものを前向きに拡張します。
これまで「保証人がいない」「もしもの時の対応が不安」といった理由で調整が難しかった入居希望者にも対応できるようになり、結果として入居率の向上につながります。
高齢入居者の多くは住み替えサイクルが短いわけではなく、むしろ長期居住になる傾向があります。そのため、安定した家賃収入の確保にも寄与します。また、地域で“高齢者を受け入れられる物件”として認識されることで、ケアマネジャー・医療機関・地域包括支援センターからの紹介動線も生まれやすくなります。
さらに、身元保証契約を通じて、死後事務・退去調整・鍵管理といった“終末期に特有の実務”が明確に整備されるため、賃貸現場のトラブルも大きく減少します。
社会課題である“高齢者の住まい確保”に貢献しつつ、賃貸経営としても持続性を高める。
この両立を実現するのが、協会との連携による新しい賃貸モデルです。
実現までのステップ
ステップ1:身元保証相談士2級 — 高齢者入居支援の基礎を学ぶ最初の一歩
高齢者の入居相談が増える中で、保証人問題、孤独死、死後事務、緊急連絡体制など、賃貸経営は“これまで想定していなかった領域”と日常的に接するようになっています。2級講座では、こうした課題の背景や法的な枠組みを整理し、入居者への説明に必要な基礎知識を身につけます。
「保証人がいない場合、どう説明すれば良いか」「身元保証と死後事務の違いは?」
「万一の時には誰が何をするのか?」こうした“現場で必ず直面する疑問”を体系的に理解することで、入居希望者・オーナー双方に安心感をもって案内できる土台が整います。
身元保証相談士 2級の概要
研修5時間×2日 試験30分
| 試験内容と範囲 | 本講座(全10時間)では、身元保証人として求められる基本的な知識に加え、見守り業務や最低限の死後事務に関する実務知識も習得いただけます。あわせて、身元保証業務に関連する周辺分野についても広く学んでいただきます。 |
|---|---|
| 想定する受講者の業種 |
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ステップ2:身元保証相談士準1級 — 契約実務・死後事務・日常生活支援を体系的に学ぶ
準1級講座では、身元保証・死後事務・日常生活支援という三つの領域を、実務フローに沿って体系的に学びます。
不動産賃貸業においても応用できる実務力として、契約の流れ、死後事務の対応、日常支援の知識を総合的に習得します。
講座はまず、「準1級の役割」「協会ガイドライン」など、保証業務を担う立場として必要な基本方針を整理するところから始まります。
その後、初回面談から契約締結、死後事務委任、6つの公正証書の理解、推定相続人調査、ライフプランの作成まで、実務の全体像を段階的に学びます。
また、死後の行政手続き・届け出・遺品整理・納骨など、賃貸現場とも関係の深い “退去後の対応” に関する知識も網羅。
賃貸管理で課題となりやすい「もしもの時に誰がどこまで担うのか」を明確に理解できるため、入居希望者への説明やオーナーとの調整にも活かせます。
加えて、他業種(士業・介護・葬祭業)との連携モデルを学ぶことで、不動産業として協会とどう連携するかのイメージがつかみやすくなり、入居支援スキームを導入する際の実務力が高まります。
準1級講座は、「身元保証の仕組みを理解し、実務として扱うための総合カリキュラム」です。このステップを通じて、賃貸業者としての専門性を高め、協会との連携をよりスムーズに進められる土台が整います。
ステップ3:身元保証相談士協会登録 — 不動産賃貸業での実務導入とサポート活用
準1級修了後に当協会へ登録すると、身元保証や死後事務を適切に運用するための特典ツールと会員サポートを利用できるようになります。
提供されるのは、契約関連資料、業務マニュアル、死後事務や見守りに関するパンフレット類など、身元保証業務全体を理解し運用するための基本一式です。
身元保証の仕組みや協会の支援内容を理解しておくことで、保証人不在の入居希望者への案内やオーナーへの説明がしやすくなり、入居判断に伴う不安を軽減できます。また、会員専用サイトや相談窓口を通じて、実務上の疑問を随時確認できる環境も整っています。協会の支援があることで、賃貸事業者が独自の体制をゼロから整えなくても、安心入居支援の仕組みをスムーズに取り入れることができます。

この3ステップを通じて、不動産賃貸業は「身元保証・死後事務」の基礎から実務までを段階的に修得し、身元保証相談士協会のサポートを受けながら、現場で確実に導入できる体制を築けます。
学びと実務を往復しながら自社の業務範囲を広げていくプロセスこそが、新しい不動産賃貸業の形をつくる第一歩となります。
上級身元保証相談士:星野 尚子
業務提携・サービス導入のご相談
高齢者入居を“断らない仕組み”を、賃貸経営のスタンダードへ
協会では、不動産管理会社・賃貸仲介会社との提携を通じて、「保証人がいない」「緊急時の対応が不安」「死後の処理が心配」といった現場の課題に寄り添い、具体的な支援体制をご提供しています。

おわりに
高齢化が進む中、「保証人がいない」「頼れる人がいない」入居希望者は増え続けています。しかし、だからといって住まいを諦めざるを得ない社会のままでは、地域の安心は育ちません。
身元保証相談士協会との連携は、賃貸業が抱えるリスクを減らすためだけの仕組みではなく、“すべての人が安心して暮らせる住まいを提供する”という新しい価値を実現する取り組みです。
安心を届ける賃貸運営へ。
その一歩を、共にかたちにしていきましょう。